場所は新幹線のぷらっとこだま。
乗務員による切符チェックが行われており、何やら隣の席で揉めていた。どうやら、席を間違えた人がいるらしい。
「あ~、たまにいるよなあ。迷惑やわ~」
と思ったら、僕でした。……はっ?(自分にツッコミ)
いや~、人生で初めて席を間違えました。本当にすみません……。
東京→名古屋
僕が席を立つと、なんとそれを皮切りに3人が席を間違っていたことが発覚。一体何のコントなのか……と疑うくらい、リアルに開いた口が塞がらなかった。
「こんなことがあるんだなあ」と思いながら、本来の席(反対側の窓際)へ移動。その後、トイレに行くために席を離れた。
ROUND1
トイレから戻ると、離れる前と何かが違っているように感じた。でも、その時は深く考えず、「まあいっか」と思いウトウト。
すると、なぜだろう。乗務員の視線を感じた。
(あれ? 切符のチェックはさっきしたよな?)
乗務員をチラ見したら、どこかで見たことがあるような麦わら帽子を持っていた。あ、それ、どこかで……ってあれ? フックにかけていた麦わら帽子がない! ここでようやく目が覚めた。
それ、おれのだよ!
そう思って身を乗り出した瞬間。まるで獲物を待ち構えていたように、通路をまたいだ反対側の席のおばちゃんが何かを訴え出した。
おばちゃんと乗務員
決定的だったのは乗務員の体の向きだった。帽子を手に持ちながらも「帽子より先に、おばちゃんの言葉を聞いてあげてほしい」みたいな角度だったのだ。理由はわからなかったけど、とりあえず耳を傾ける姿勢を取った。
でも、走行中の新幹線。内容は聞き取れなかった。おまけに寝起き・中途半端な姿勢のまま(太ももプルプル)。
そしてやっと聞こえてきた言葉は「熱海がうんちゃら」。
懸命さというか謝意を感じたので、テキトーに頷いておいた。(とりあえず座りたかったわけではない)
ようやくおばちゃんは穏やかさを取り戻し、乗務員も僕に帽子をくれた。すると、今度はなぜか隣の席の人が事情を教えてくれた。
真相発覚
――僕がトイレに向かった時、ちょうど熱海駅に着いたらしい。それを見たおばちゃんが降車したと勘違い→乗務員に忘れ物を報告したんだって。
ああ、だから謝ってたのね。要は「勘違いしてごめんなさい」的なことか。でも、僕が最初に思ったのは、
「東京から熱海やったら鈍行で行くわ!」
ということだった。
ROUND2
やっっっと落ち着いた。
(やれやれだぜ……)
と思っていたら、今度はお茶がないことに気が付いた。
ぷらっとこだまの楽しみと言えば、それはもうドリンク引き換え券に尽きる。僕の中で、サントリーの黒烏龍茶と相場は決まっているのだ。
公式HPより。ミランダ・カー「クロ!」
それなのに……まだ名古屋まで一時間近くある。その間をドリンクなしで過ごすなんて。この時になって始めて怒りが湧き上がってきたことを覚えている。
(あんのババア! 報告が早すぎんだよ! ションベンやぞ!)
そう思っているとタイミング良く、あの乗務員が通りすがった。
すみません! と呼び止めて「もうお茶はないですよね?」と聞くと、やはり捨ててしまったとのことだった。
とにかくお茶を飲みたい
で・す・よ・ね~。もうおばちゃんを許しているし、乗務員に「お茶だけ返して!」と言えるわけもない。こだまに車内販売はないのだ(あっても買わないと思うけど)。我慢するしかなかった。
でも、お茶が飲みたかった。お茶がないからお茶を飲みたかった。そんな時に限って、窓から見える景色は静岡の美しい茶畑ばかり。
茶畑ばかり。
茶畑ばかり……
茶畑ばっかり!!
……。
……。
そんな行き場のない気持ちを察してくれたのか、再び乗務員が僕の元へ来た。
なんと、「自分の買った水でよろしければ」と言って、水を差し出してくれたのだ。
ただの乗務員→愛すべき乗務員さんに
おお! 乗務員さんの思いやりとでも言うのだろうか。それが本当にうれしかった。断ろうとも考えたが、せっかくなのでご好意に甘えることに。
「こちらで確認していれば良かったんですけど……申し訳ありません」
あまりに下手に出られて、ただただ恐縮。名前聞いてお礼を言おうと思ったのだが、そんな間を与えてくれないくらいに謝り倒された。
その様子を見たのだろう。再びおばちゃんが通路越しに謝ってきた。
もうわかったって! 大丈夫ですって! コミュニケーションが好きなのはわかったから!
もちろん、人が良いのは百も承知だ。
もらった水が意外だった
もらった水は「サントリー 南アルプスの天然水朝摘みオレンジ」。
デカイ図体して意外なモン飲むな~と思ったことを覚えている(失礼ですみません)。すぐに飲んでも良かったのだが、飲む姿を見られたくなかった。
と言うのも、もう僕の行動は周囲に筒抜け。あいつ飲んだぞ! と思われるのが恥ずかしかった。それに、下手すりゃまたおばちゃんが絡んでくるかもしれないし。
結局、名古屋で降りてから飲むことに。
感想
うーん……全然美味しくない。ぬるくて、不自然にあんまい。さっぱりしたいのに、想定しない甘さのギャップがあったからだろう……この時の強烈にマズさを覚えている。そして、記念に写真を撮った。
みなさん、ありがとうございました!
今振り返っても変な出来事だった。だって、誰も悪くないから(発端は僕だけど)。
素晴らしい対応をしてくれた乗務員さん、おばちゃんさん、隣席さん。あとはサントリーさんも。
あの時はお世話になりました!
ありがとうございました!(2014年6月7日)
コメント
乗務員素敵ですね。いい話です。