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【出版社別】道徳の教科書の内容を比較しました(平成30年度小学校)

学び本・書評

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【2018年2月15日 追記】

平成30年度使用小学校教科用図書「特別の教科 道徳」展示会に行ってきました。

 

来年から、小学生は教科書で道徳を勉強することになりました。そこで、文部科学省に認定された8つの出版社の教科書を比較しました。

  • 出版社の紹介順に意味はありません。
  • 撮影禁止だったので、より詳しい情報は記載したHPで確認してください。
  • 小1の教科書の比較は内容的にも難しかったので、主に小6で比較しました。
  • 実際に手にとって僕が感じたことを記述するように心がけました。

 

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この記事の著者
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就職できずに当時薬学生だった彼女のヒモを経て、ブロガーに(15年の交際を経て結婚!)。エンタメ分野のレビュー、感謝を綴ったエッセイが好評。当時の内容を綴ったノンフィクション小説「薬剤師国家試験に落ちた彼女を、僕は隣で見ていた」が電子書籍化しました!

学習指導要領の内容は同じ

A.主として自分自身に関すること
B.主として人との関わりに関すること
C.主として集団や社会との関わりに関すること
D.主として生命や自然、崇高なものとの関わりに関すること

これらの大まかな指針があり、その中で各々の題材を扱っています。

それでは比較していきます。

 

道徳教育:文部科学省

 

出版社別:道徳の教科書

光文書院

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情報通信技術(ICT)に強い出版社です。

教科書の最初のページに、「一年生のお世話係 ―アフター・ユー―」というページがありました。

これは1年生の時に学んだことを思い出させる内容です。思い出すことで1年生の立場に立つ、という視点は他社にはなかったと思います。相手の立場になって考えることが大切なのだと伝わります。

また、「ちびまる子ちゃんと考えよう!」というページがありました。
まる子の周りには家族や友達の他にもたくさんの登場人物がいます。それを自分に置き換えて、自分の周りにいる人を書き出してみよう、という内容です。
自分の周りにはどのような人がいるのか。また、どのようにして成り立っているのかを理解することにつながります。ちびまる子ちゃんを題材にすることで、わかりやすさと面白さがありました。

 

最後のふろくに「学びの足あと」という付録があります。

学習した日付や学んだことを記載するのですが、その中に「心の矢印」というものがありました。
↖︎←↙︎

この3択からその日学んだことを踏まえて「心の矢印」を選びます。↑↓を外しての3択なので、考え抜いて選んだことが伝わります。↑↓があるとむやみに↓↓↓↓……と書き込み、ダークサイドに堕ちたことを主張して笑いに走る生徒もいるでしょう。

道徳で扱う内容は多岐に渡っており、必ずしも喜ばしい内容ばかりではない。それでも、日常的に自分と向き合うことが大切なんだという、作り手の考えが伝わります。

 

小学校道徳教科書「ゆたかな心」|光文書院

 

廣済堂あかつき

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当時の廣済堂出版に見城徹氏が在籍していたと知り、驚きました。

目次の次に「星とたんぽぽ 金子みすゞ」の詩が掲載してあります。

 

著名人やスポーツ選手から学ぶページはどの教科書にもあるのですが、この教科書はそれが多い印象が残りました。

山中伸弥教授は他社にも掲載されていますが、例えばさかなクンやスティーブ・ジョブズ、日本代表サッカー選手は珍しかった(……と思います)。こういった視点で比較するのも面白かったですね。各社のHPにも、教科書内で言及している偉人や著名人などは紹介されています。

 

印象に残ったページを紹介します。

「著作権とは何だろう」

今後も栄えるであろうインターネット時代。その中で無視できないのが著作権です。いつ、インターネット上の著作権の取り締まりが厳しくなってもおかしくない。これは大人でも難しいことですが、それでも、頭の片隅にでも残しておくことが大切なのだという作り手の気持ちが伝わります。

また、副読本がある出版社もあります。この出版社の副読本は、その質問レベルが非常に高いです。

質問の一例

将来行ってみたい国や、その国でしてみたいことなどありますか?
自然とは人間にとってどんな存在だと思いますか?

他にも、(捉えようによっては)哲学的な質問が数多くありました。経験上、大学のゼミで取り上げられても何ら不思議でないレベルです。答えられない大人も多いんじゃないでしょうか。一貫しているテーマは、「自分を見つめ、考える」です。

 

平成30年度用 小学校道徳教科書¦廣済堂あかつき

 

学校図書

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教育副読本が強い出版社です。HPからも道徳を強みにしてきたことがわかります。

教科書の表紙には「読みもの」と記載してある通り、文章が多めです。一方で、副読本には「活動」と記載してあり、挿絵が多めで書き込みは少なめ。まさに2冊でひとつの教科書です。

他社にはない、一つの大きな特徴がありました。

「保護者の方へ この教科書でめざすこと」というページが教科書の最後にあります。

これは比較を通じて個人的に感じたことですが、道徳という内容そのものが小学生と教師だけでは賄えないように思えるのです。

頭の中で文字的に理解していても、経験が伴ってなければ体感的に理解できたとは言えないと僕自身が考えているからです(この考え方も経験によるものです)。

なので、保護者と一緒に学んでいくことをもっと推奨しても良いのでは、と個人的に思いました。というか、保護者以前に「一人の人として」道徳の教科書を読むことはオススメできるかもしれません。それほどまでに内容は充実しています。

 

個人的に印象に残ったページを紹介します。
「ほこりある生き方、喜びのある生き方」

私たちの中には、強さと弱さがいっしょにすんでます。人は弱さを乗り越えたその先に、希望の光をつかむことができるのです。

ページ内で紹介している田中耕一、小林虎三郎、徳永兼一郎、ウィルソン・ベントレー、森下洋子、マザーテレサから強さと弱さを考察するという内容です(敬称略)。ふ、深すぎる……けど面白い!

 

小学校道徳 特設ページ | 学校図書株式会社

 

日本文教出版

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表紙が唯一写真です(他社はイラスト)。

中身は、絵と写真が多いです。その理由となるのかはわかりませんが、美術・図画工作で国内トップシェアですね。少なくとも、強みを活かしていることは伝わります。

昭和33年、「道徳の時間」が特設されて以来、私たちは小学校、中学校の副読本をはじめ数々の教材を発行してまいりました。

 

個人的に印象に残ったページを挙げます。

「税金って誰のため?」

日本国憲法で定められている納税の義務を国民が果たさなくなったら、どうなるのでしょう。

という問いと共に記載されているページがありました。これは個人的に素晴らしいと思いました。なぜならば、「お金の勉強」を義務教育で取り入れた方が良い、という僕の考えと合致するからです。

お金になって真面目に勉強したのは、就活の時だったと思います。どのようにお金が流れに流れて自分の元へたどり着くのか。それを理解することはつまり、世の中の流れをつかむことと似ています。新たに好奇心が生まれるキッカケにもなりました。また、この教科書の基本方針の一つである「社会に根ざした道徳教育を!」に通じます。

学習指導要領は同じでも方針や編集は異なるので、これも比較する上で面白い・興味深いことでした。

また、副読本に道徳ノートがあります。

こちらは本書を学ぶことで、書き込みすることが主です。他社との比較としては、書き込み欄の割合が最も多かったです。

 

平成30年度版 小学校道徳科教科書「小学道徳 生きる力」のご案内|道徳と日文 これまでも、これからも|日本文教出版

 

教育出版

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北海道における小学校・中学校用の教科書の採択シェアが圧倒的に高いそうです(ウィキペディア調べ)。

教科書の最初のページに

「好きな言葉」「自分の長所」「自分の短所」「尊敬する人物」「みんなとやってみたいこと」「将来の夢」

なりたい自分の姿と、そのためにのばしたいところを書きましょう。

と記載するスペースがあります。

これに代表されるように、常に自分だったらどうするかを問いかけているような内容・構成だと感じました。それは各々のページの最後に、「考えてみよう」と促していることからもわかります。

ちなみに小1の教科書は以下でした。

「すきな どうぶつ」「すきな きせつ」「すきな たべもの」「とくいな こと」「たいせつな もの」「しょうらいの ゆめ」

しょうがくせいに なって がんばりたい ことは なんですか。

 

他社との比較としては、写真や挿絵を含め、使用しているカラーが最も少ない印象を受けました。あっさりしていると思います。教える側の熱意や工夫を考慮して作られているのかもしれませんね。

 

最も印象に残ったページは「正義の実現のために」です。

内容としては、学校生活における差別や偏見について考えることです。ただ、言葉として強いものがあるので頭に残っていました。その理由を考えたところ、「いじめをなくす」という「教科書のポイント(HP記載)」の一つと合致しました。どの出版社もいじめの問題については扱っています。ただ、こういった点でも違いや作り手の意図を感じられたことは良かったです。

 

小学道徳 はばたこう明日へ – 教育出版

 

東京書籍

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教科書出版の最大手で、会社名を聞いたことがある人も多いと思います。

他社と比較して思ったことは主に3つ。

 

1つは字がハッキリとしていて大きいこと。

なんとなく思っていましたが、HPを見ると、編集上の工夫の一つに「ユニバーサルデザインに対応」とありました。字だけでなく、色使いなども工夫されています。工夫されていても読者に伝わるかそうでないかは大きな違いなので、この点は素晴らしいと思いました。

もう1つは、写真が訴えかけてくる点です。
「桜守の話」の中の仁和寺のさくら、「白神山地」のブナや渓流、「土石流の中で救われた命」などなど。周囲の環境問題に関して多く取り扱っており、目を引くものが多くありました。結果的に、内容にも目が向くことが予想されます。

 

最後の1つは、「受けつがれてきた伝統や文化」という巻末の見開きページです。

能や狂言、人形浄瑠璃など日本の伝統芸能をいくつも紹介しています。
ただ、それだけではなく、中には小学生が参加しているものもあります。と、同年代として関心を抱くような内容を紹介していました。他社があまり伝統芸能については扱っていないこともあり、これは素晴らしいと思いました。

 

小学校 道徳 | 【東京書籍】 平成30年度用小学校道徳教科書のご紹介

 

学研

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ふろく付き学年誌「1~6年の科学」、僕も購読していた時期があります。教科書だけに限らず、有名な出版社の一つです。

他社との比較としては、本のサイズが一番デカイです。中身の挿絵や写真もダイナミックでした。それを象徴するページがあります。

最初の見開きページです。富士山のご来光の写真と共に

ぼくの前に道はない。ぼくの後ろに道はできる。高村光太郎 道程より

と記載してあります。なぜこの文章を小6の教科書の最初に持ってきたのかを考えれば、作り手の意図がやはり伝わります。

 

個人的に最も響いたページを紹介します。

「情報モラルの会話のゆくえ」
LINEを想起させるメッセージアプリの会話が掲載されています。友達からメッセージが返ってこず、途切れる形で終わっています。このやり取りの中から、なぜ友達はメッセージを送ってこなかったのか? と考える内容でした。その理由を自分と友達の立場になって考えるという……。

これは相当高度なことだと思いました。

なぜならば、返信してこない理由がわかったからと言って、現実の人間関係の状況を改善できるとは限らないからです。大人でも悩む人はゴマンといると思われます(特に恋愛が絡むと)。

ただ、受け止め方や付き合い方を学ぶという点においては素晴らしいと思いました。人によって異なる価値観があることを学ぶのは大切だと思います。というか、大前提だと僕は考えています。

そもそも、携帯電話やスマートフォンとの上手な付き合い方が出来るようになるのは、ある程度使ってからでしょう。使い方に慣れ、依存気味になり、距離感や時間の使い方を考え始める(僕がそうでした)。だからこそ、保護者としては子供に機器を与える時期を考えるのは当然だと思います。

文科省認定の小6の道徳の教科書に掲載されている事実を考えれば、情報教育は今後もますます重要になることを示しています。 教える側がどうやって教えるのかが気になりますね……。

 

みんなの道徳

 

光村図書

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国語に強いことで有名ですね。小・中学校用国語教科書ではトップシェアです。

やはり強みを活かしていることが紙面からも伝わります。読ませる文章が多い印象です。書き込み欄が少なかったことも書き足しておきます。

また、小1と小6で最も内容・構成が異なる教科書だと感じました。ひらがなの羅列から、一冊の本へと変わっていく。なので、小6に関しては国語の教科書っぽさもありました(内容は、道徳の学習指導要領に沿った文章ですが)。

道徳の時間について言及している中に
「話し合って考えよう、演じて考えよう、読んで考えよう、書いて考えよう」
というページがありました。演じて考えようって何? と思ったのですが

演じると、考えただけでは気づかなかったことに気づけるね。

演じているのを見ると、自分も人からどう見られているのかがわかるね。

と書いていました。

この考え方はある意味斬新で、面白いと思いました。今まで読んだ数多くの自己啓発本やコミュニケーション論、ビジネス本の中で深く言及しているものがなかったからです。

 

他にも「一さいから百さいの夢」という、日本ドリームプロジェクトの書籍を引用しているページもありました。その中で

「ここに、あなたの十二さいの写真をはろう」

とありました。写真を貼ることを記載してある教科書は他社にはなかったと思います。

 

この本を持っていますが、面白いのでオススメできます。

 

「特別の教科 道徳」 | 光村図書出版

  

この記事を書くにあたって 

大人だって道徳を学びたい

そもそも僕自身、道徳を語ることが出来るのだろうか。

教科書を比較する中でそう思いました。つまり、道徳の教科書を見ることは、自分と向き合うことに直結しているんです。

それほどまでに、人生と深く関わっている内容ばかり。そこから導き出されることは、大人でも道徳の授業を受けたいと思う人は、潜在的に少なくないということです。ただ、誰に教わるのかと考えたら一気に難しくなりますね……。

 

就活などの経験

教科書を作る企業を巡った経験が活きています(実際にこの中で回った企業もあります)。面接はもちろん、出版社ごとに本の比較をしただけでなく、関連会社との関係性なども調べたことは良い思い出です。

なので、作り手の立場や苦労を何も知らない人間ではないことを記しておきます。

 

小学生の立場には立てませんが……

単純に一冊の本として、道徳の教科書は面白いと思いました。

比較すればなおさらです。小学生に興味を持ってもらうには? という観点から、各社の工夫や思考が伝わってくるんです。それは作り手の意図を汲むことでもあり、物事の過程が見えることでもあります。調べれば調べるほど奥深い。

ただ、実際に学ぶのは小学生です。なので、勝手に比較しておいてアレなんですが、小学生でない僕の意見や言葉は全く参考にならないとも言えます。

 

それでも、道徳の教科書は面白いと思いました。

 

どのような授業が展開されるのか、興味が尽きません。また、道徳を教科書で学んだ世代がどのように社会に影響を与えていくのか。これらを一人の大人として、注意深く見守っていけたらと思います。

 

高校でも道徳教育推進へ

小中学校で「道徳」が教科となることを受けて、高校でも道徳担当の教員を配置し、新たに始まる「公共」の授業などで道徳教育が進められることになります。

教える量は今と同じままですが、内容は、地理歴史で日本と世界の近現代史を中心に学ぶ「歴史総合」が新設されるなど、大幅に見直されます。このうち、すでに学習指導要領が改訂された小中学校で道徳が教科に格上げされたことを受けて、高校でも道徳教育が推進されます。

高校ごとに道徳教育を推進するための教師を配置して、新設される公民の「公共」や「倫理」の授業で、人間としての生き方や国と郷土を愛することなどを指導するよう求めています。

今後も道徳関連のニュースがあれば、追記もしくは記事を書こうと思います。

 

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