【2018年2月12日 追記】
読み終わると、旅に出たくなるような本ってありますよね。それらを旅好きがまとめてみました。小説、エッセイ、漫画からセレクト。
小説・エッセイ
from everywhere./坂本真綾
二〇〇九年、ヨーロッパ八カ国を巡る一人旅。「何も持たないただの私」となった坂本真綾が、“これまで”を振り返り、“これから”を見つめた37日間の「全記憶」がこの一冊に。好評を博した初の長編エッセイ
この本の紹介がしたかったから&この本を紹介した記事がなかったから、自分で作成したと言っても過言ではありません。
坂本真綾さんが声優・歌手だということを、僕はこの本を通して知りました。 読後に歌を聞いてみたりしたのですが、特に興味が湧くわけでもなく、他の著書が好きなわけでもなく……。
ただただ、この本の中の文章が好きなんですよね。作中は「一人」に宛てて手紙を書いていて。その人を胸の片隅に想いながら旅をしています。惹き込ませる文体で、構成や装丁にも美しさを感じます。この本を読んでから、いつかポルトガルに行くんだ! と自分の中で決まってしまった本。
深夜特急/沢木耕太郎
インドのデリーからイギリスのロンドンまで、乗合いバスで行く―。ある日そう思い立った26歳の〈私〉は、仕事をすべて投げ出して旅に出た。途中立ち寄った香港では、街の熱気に酔い痴れて、思わぬ長居をしてしまう。マカオでは、「大小」というサイコロ博奕に魅せられ、あわや…。1年以上にわたるユーラシア放浪が、今始まった。
旅に出たくなる本の代表だと思います。旅に出たくなる本であると同時に、旅に出てしまう本でも、旅に携えて行く本でもあると思います。今まで話したことのあるバックパッカーの誰もが、この本を知っていました。
最終巻である6巻を読み終えた時点で、何か物足りなさがあるんですよね。あっけなく終わるというか……でも、そこがポイントです。読後感と衝動を携えて、旅に出た人も少なくないでしょう。
旅人たちの間では、麻薬のような本とも。
何でも見てやろう/小田実
若さと知性と勇気にみちた体当り世界紀行。留学生時代の著者が、笑顔とバイタリティーで欧米・アジア22ヶ国を貧乏旅行して、先進国の病根から後進国の凄惨な貧困まで、ハラにこたえた現実を、見たまま感じたままに書いたベスト&ロングセラーの快著。
「深夜特急」を紹介するならば、こちらの本も紹介しなければなりません。沢木耕太郎がこの本に触発されて、「深夜特急」を書いたとも言われています。
前半のアメリカと後半の中東で、ガラッと内容が変わる点が特徴です。特に、イラン編の人間の階級に触れる経験は考えさせられます。一昔前の紀行文ですが、それが逆に新鮮です。当時の各国の事情や、日本との比較など、先人のおかげで今があることに感謝せずにはいられません。
貧乏旅なのですが、知性溢れる文章が魅力です。……のではなく、貧乏旅だからこそ、知性が増していくことがわかる本です。少し長いけれど、読みやすさがある本。
行かずに死ねるか!/石田ゆうすけ
「平穏な人生?それが運命なら自分で変えてやる!」そう決意してこぎだした自転車世界一周の道。だが、砂漠地帯で拳銃を持った強盗が―!身ぐるみはがされた後も疾走し、出会いと別れを繰り返しながら駆け抜けた七年半の旅。笑えて泣ける、大興奮紀行エッセイ。
これもまた、非常に有名な本です。7年半の旅を一冊にした本。タイトルに魂が宿っています。文庫が出てもう10年近く経つのに色褪せない「何か」を感じ取ってほしいなと思わずにはいられない本。個人的には、あとがきから読んだ方が軌跡を辿れて良いと思っています。
「自分の目で確かめることの大切さ」
これを伝えられる本だと思います。なので、中学生の学級文庫の選定を依頼された時にも推薦した本でもあります。
長い旅の途上/星野道夫
きっと、人はいつも、それぞれの光を捜し求める長い旅の途上なのだ―。1996年、カムチャツカで熊に襲われて世を去った著者が残した、最後のメッセージ。過酷な自然に生きる人間や動植物、そして極北の大地に注がれたまなざし。人生の豊かさとは、人間の幸とは、いま改めて我々に問いかける静かな声がここにある。
きっと、人はいつも、それぞれの光を捜し求める長い旅の途上なのだ
この一文……共感しませんか?
著者の「旅をする木」とどちらを紹介するか迷ったのですが、今回はこちらを。写真も少なく、短編の随筆集のような構成ゆえに、若干哲学的な内容になっています。誰もが心に風景を持っており、それによって励まされることがきっとある――それを僕に教えてくれた本です。
自分の中に旅する心を既に持っている人向けです。旅する心を育てる過程ならば、「旅をする木」を推薦します。「旅をする木」の方が写真も多くて見やすいかも。
荒野へ/ジョン・クラカワー
アラスカの荒野にひとり足を踏み入れた青年。そして四か月後、うち捨てられたバスの中で死体となって発見される。その死は、やがてアメリカ中を震撼させることとなった。恵まれた境遇で育った彼は、なぜ家を捨て、荒野の世界に魅入られていったのか。登山家でもある著者は、綿密な取材をもとに青年の心の軌跡を辿っていく。全米ベストセラー・ノンフィクション。
結末は悲しいものですが、旅をしなければわからない感覚が見事に描かれています。ノンフィクションだからこそ、人の心に訴えかけるものがある……全米でベストセラーになった理由も納得できます。
青年の死を以て、旅における死を学ぶことを訴えかけている作品とも言えるでしょう。恵まれた環境の中でそのまま生きていたとしても、きっと旅に出ることは止められなかった……世界の広さと己の狭さ、無知への恐怖、旅の中毒性などが描かれています。
ちなみに、 映画化も↓↓
「また、必ず会おう」と誰もが言った。/喜多川泰
主人公・秋月和也は熊本県内の高校に通う17歳。 ひょんなことからついてしまった小さなウソが原因で、単身、ディズニーランドへと行く羽目になる。 ところが、不運が重なったことから最終便の飛行機に乗り遅れてしまう和也。 所持金は3400円。 「どうやって熊本まで帰ればいいんだ……」。 途方に暮れる彼に「おい! 若者」と声をかけたのは、空港内の土産物売場で働く1人のおばさんだった――。
旅をした者ならば共感せざるを得ないような、素晴らしいタイトルです。ただ、中身は壮大な話ではなく、高校生が人の優しさに触れながら旅をする小説です。人との出会いの素晴らしさを描いています。
喜多川泰先生は、読みやすい文体と心が温まるような話がとても上手い作家さんです。文庫がなかなか出ないなーと密かに思っている作品。
辺境・近境/村上春樹
久しぶりにリュックを肩にかけた。「うん、これだよ、この感じなんだ」めざすはモンゴル草原、北米横断、砂埃舞うメキシコの町……。NY郊外の超豪華コッテージに圧倒され、無人の島・からす島では虫の大群の大襲撃! 旅の最後は震災に見舞われた故郷・神戸。
村上春樹作品は一通り読んでいますが、小説よりも紀行文の方が好き! という意見にも頷けるような本の代表がコレです。小説しか読んだことのない人で「小説は一回読んでみたけど苦手だった」と思った人におすすめ出来ます。
この作品を読み終えたあと、旅を共にした写真家の松村映三氏が収めた『辺境・近境 写真篇』をぜひ手にしてほしいと思います。きっと、旅に思いを馳せることが出来るでしょう。そして、自分の中の旅への思いを想起させられること間違い無し。
絵本・漫画
ぼくを探しに/シェル・シルヴァスタイン
何かが足りない それでぼくは楽しくない 足りないかけらを探しに行く ころがりながらぼくは歌う
「ぼくはかけらを探してる、足りないかけらを探してる、ラッタッタ さあ行くぞ、足りないかけらを……」
本と言うより、絵本と言った方が正しいかもしれません。
――大学2年の時、僕は一人で中東のイエメンに行こうとしていました。旅をしなければ得られない、旅をすることでしか成長できないと当時は思っていて。命を賭けて得られるような、人生に残るような経験が欲しい……と切に願っていました。
そんな時に、縁あって出会った写真家の方におすすめしてもらった本です。焦らずに、自分としっかり相談した上で、正しい判断を……そんなメッセージが込められている本だと思っています。自分を軽視する必要なんかないんだよ、と教えてくれる本。
旅の絵本/安野光雅
世界でもっとも人気のある絵本作家の一人安野光雅が描く、遊び心いっぱいの人気シリーズです。克明繊細な筆使いで描かれた、街並みや自然の風景の中に、童話の主人公や名画の一場面、スターや事件などがさりげなく描かれ、見飽きることがありません。1977年に出版された最初の中部ヨーロッパ編から、イギリス,アメリカ、中国など世界各地をめぐり、最新刊ではついに日本の旅へ……。
旅小説の代表が「深夜特急/沢木耕太郎」ならば、旅絵本の代表は「旅の絵本/安野光雅」でしょう。全8冊です。世界でもっとも人気のある絵本作家かどうかは僕はわかりませんが、大人にも響く絵本であることは間違いありません。
最大の特徴として、この絵本の中には多くの人が描かれています。絵本を文章で説明するのは難しいですが、その土地の人の人生に思いを絵本のペースで巡らせることが出来ると言いましょうか、じわじわと胸が熱くなります。
子供の時に見たかった……。
シュナの旅/宮﨑駿
作物の育たない貧しい国の王子シュナは、大地に豊饒をもたらすという「金色の種」を求め、西へと旅に出る。つらい旅の途中、人間を売り買いする町で商品として売られている姉妹と出会う。彼女らを助けた後、ひとりでたどり着いた「神人の土地」で、金色の種を見つけるが…。
「風の谷のナウシカ」の前作と言ってしまっても良いかと思います。昔のジブリが好き! という方にはたまらない作品。もののけ姫のヤックルもこの中に登場しますよ。
先程の「荒野へ」では死について書きましたが、こちらは生きるための旅です。もののけ姫のアシタカのような動機で物語は始まるので、ジブリのプロットが好きな方にはおすすめ出来ます。
著者紹介のページがあるのですが、髪が黒い時代の駿さんが見られます笑。また、「犬になった王子」という作品が元になっています。
ハチミツとクローバー/羽海野チカ
6畳+台所3畳フロなしというアパートで貧乏ながら、結構楽しい生活を送る美大生・森田、真山、竹本の3人。そんな彼らが、少女のように小さく可憐な女の子・花本はぐみと出会い…!?
自分探しの旅&人との出会い&旅から帰った時の爽快感はこの作品しかない! と思い、紹介するに至りました。
「竹本くんが自転車に乗って旅に出たとき、私も道に迷ってしまった」
と、羽海野チカ先生がどこかで語っていたはず(出典忘れた)。つまり、著者にとっても旅であり冒険だった、と言える作品だと思うんですよね。登場人物各々の人生の選択を丁寧に描いているところが僕は好きです。
ちなみに、竹本くんが旅に出るのは6巻~です。
メイドインアビス/つくしあきひと
隅々まで探索されつくした世界に、唯一残された秘境の大穴『アビス』。どこまで続くとも知れない深く巨大なその縦穴には、奇妙奇怪な生物たちが生息し、今の人類では作りえない貴重な遺物が眠っていた。アビスの不可思議に満ちた姿は人々を魅了し、冒険へと駆り立てた。そうして幾度も大穴に挑戦する冒険者たちは、次第に『探窟家』と呼ばれるようになっていく。アビスの緑に築かれた街『オース』に暮らす孤児のリコは、いつか母のような偉大な探窟家になり、アビスの謎を解き明かすことを夢見ていた。そんなある日、リコはアビスを探窟中に、少年の姿をしたロボットを拾い…?
最初に読んだ時に、「ワンピース/尾田栄一郎」や「鋼の錬金術師/荒川弘」のような練り上げられたプロットを感じました。と言うのも、すべてが謎に包まれており、話が進む度に伏線回収が行われるからです。
主人公のリコの出生、偉大な探窟家である母親の生死、レグの存在、どこまで続くかわからないアビスの謎……。世界の成り立ちやキャラなど、読みながら理解していくような漫画です。
個人的にファンタジーやSFといったジャンルは苦手なのですが、そんなことをふっ飛ばしてしまうほど、壮大な世界観が漫画の中に広がっています。どうやったらこんなデザインやストーリーが一人の人間から創り出せるのか……ため息が出るばかりです。読み終えた頃には、「度し難い!」という言葉を人に使いたくなるでしょう!少しグロ描写あり。あとは、やはり旅がしたくなります。
HUNTER×HUNTER/冨樫義博
父と同じハンターになるため、そして父に会うため、ゴンの旅が始まった。同じようにハンターになるため試験を受ける、レオリオ・クラピカ・キルアと共に、次々と難関を突破していくが…!?
ハンター試験編、ヨークシン編、グリードアイランド編、キメラアント編と話は展開されますが、それぞれにキャラや展開が異なるので違った面白さを楽しめます。カルト的な人気にも納得できる漫画です。
色々な見方が出来ると思いますが、基本的には旅に出て、仲間と出会い、その土地で成長していくという流れがあります。そのような構成の作品は膨大にあるのですが、その中で最も楽しませてくれた漫画だったので選んでみました。
あとは……再開待ってます。再開しました→あ、また……→再開しました!(2018/2/12)
ゴールデンカムイ/野田サトル
『不死身の杉元』日露戦争での鬼神の如き武功から、そう謳われた兵士は、ある目的の為に大金を欲し、かつてゴールドラッシュに沸いた北海道へ足を踏み入れる。そこにはアイヌが隠した莫大な埋蔵金への手掛かりが!? 立ち塞がる圧倒的な大自然と凶悪な死刑囚。そして、アイヌの少女、エゾ狼との出逢い。『黄金を巡る生存競争』開幕ッ!!!!
埋蔵金を記した地図は囚人に彫られた入れ墨で、それを主人公たちが回収していくことが旅の目的です。囚人の登場は伏線回収にもなるので、話の流れが非常にわかりやすい点が特徴です。
また、北海道全域が舞台なので、土地勘がある方は思いを馳せることが出来るでしょう。北海道が好きな僕としては、北海道に行きたくなります。アイヌ文化、グルメ漫画の側面もあり、テンポも良く読みやすい作品と言えるでしょう。
ただ、たまーに、下ネタで悪ふざけがすぎる傾向にあります。極めつけは、姉畑支遁というキャラでした……。
ワニ男爵/岡田卓也
その名はアルファルド・J・ドンソン。ワニ。職業:小説家。楽しみは仲よしのウサギ、ラビットボーイとの食べ歩き(生ガキや讃岐うどんなど)。超ジェントルマンだけど、お店で時々「野生」が騒いでしまい…。
グルメ漫画の中でも異彩を放っているのが、この「ワニ男爵」。上品な言葉遣いのワニと、口の悪いウサギが日本各地を食べ歩くのですが、その掛け合いとオチが見事な作品。一話完結で起承転結がしっかりしており、食に刺激されたワニ男爵が最後は「野生」に戻って我を忘れてしまいます。
ちなみに1巻では、香川に讃岐うどん、大阪にたこ焼きを食べに行っています。
「食事を共にすれば友であり 同じ河に浸かればほぼファミリー」
これがこの漫画の理なのですが、意味がわからないようでわかる感じが個人的には好きです笑。
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