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【ATMネタ】隣とハモりだして超気まずかった話(あるある?)

日常エッセイ

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 日曜日のとある郵便局。この日はATMに用があった。いつものように自転車に鍵をかけ、郵便局に入ろうとした時だ。

 一人の男性が僕の目の前にすっと体を入れてきて、先に中へ入って行った。

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この記事の著者
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大卒後、就職に失敗→薬学生の彼女のヒモを経てブロガーに(15年の交際を経て結婚!)。エンタメ分野のレビュー、感謝を綴ったエッセイが好評。当時の内容を綴ったノンフィクション小説「薬剤師国家試験に落ちた彼女を、僕は隣で見ていた」が電子書籍化しました!

狭い密室で二人きり

「こいつ、抜かれたことを根に持ってやがるな」

 瞬時にそう察した。と言うのも、お前より先に入ってやるぜ! という意思を感じたのだ。郵便局の10メートルほど手前でその人を抜かしたのだが、どう考えてもその時とは同じ規則性にない素早い数歩だった。普段は路側帯を走っているが、駐輪する時はどうしても歩道に入らなければならない。それが仇になった形だ。

 田舎のATMは台数が少なく、オバチャンが陣取ることも多い。ゆえに、我先にと争奪戦になることも珍しくない。でもまあ、ここは二台ある。入ってみると誰もいなかったので安心した。しかし、しばらくしてその考えは変わった。

 

『『暗証番号を入力してください』』

 

 なんと、隣のATMとこちらのATMが軽~くハモリだしたのだ。

 休日なので窓口はシャッターで閉じられている。つまり、狭いATMスペースに二人ぼっちである。せめて後ろに並んでいる人がいればまだ違うのだが、如何せん、除き防止の壁を隔てているだけ。急いで暗証番号と引き出し金額を入力して「さっさと出よう」と思ったのだが、ここでもなんと、

 

『『ヴォーーン』』

 

 というお札を整理する音がかぶった。

 おいおいマジかよ! 暗証番号も引き出し金額もその入力時間もほぼ同じなの? ってことはヤツも同じことを考えている……? ……気まずい……。今でもあの時の気まずさを思い出せる。

 でも、本当の問題はこの後だ。このままだと同じタイミングで取り出し口が開き、同じタイミングでカードやお札を取る可能性が高い。そこで、じゃあどっちが先に出るの? と疑問が生じる。

 考えても見てほしい。ヤツは自転車で抜いただけで根に持つような危険な男なのだ。僕に先に入らせまいと闘争心をむき出しにしてくるようなヤツなのだ。

 つまり、出口で足並みが揃ってしまえば再び同じことが起こる可能性は否めない。アイコンタクトや会話が発生する確率も高くなる……。でも、それだけじゃない。更に厄介なのが、お互いに譲り合いの精神が発揮された場合だ。仮にどちらも譲り合った場合、どちらも動き出すタイミングが酷似することはこの国において誰もが経験しているだろう。歩道ならば苦笑いして「すみません」で済むが、場所が問題なのだ。そう、ここはATM。

 しかもお金を引き出した後なので、身の危険を感じても仕方がないだろう。シンプルに、怖い。

 そうこう考えていたら、致命的なことに気付いてしまった。僕は出口に近い手前側。そして、若干のタイムラグゆえに、どうしても背後を取られる可能性が高いのだ。先に体を入れてきた男に対して、先に体を入れることは出来ない。ここはサッカー場ではないのだ。また、僕が振り向いた時、ヤツと目が合う可能性も高い……。そのことに気付いた時、先に出てもらう以外の選択肢がなかったことに気付いた。

 

『『ピピピーピピー』』

 ほぼ同時に音が鳴った。

『『ご利用ありがとうございました』』

 

 ……………………。

 ヤツが先に出たことを確認して、僕もその場を離れた。背後から一突きされることはなかったが、結局ヤツの面は拝めなかった。正直、一目見たい気持ちに駆られていた。

 しかし、ここはATM。ほんの些細なことで、危険人物に仕立て上げられるかもしれない。帽子やサングラスをいちいち外すような僕のような良い子ちゃんが、そんなことをしていいわけがないのだ。

 ったく、嫌な野郎と一緒になっちまったぜ。。。  おわり

 

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