【電子書籍に掲載しなかった内容】薬剤師国家試験に落ちた彼女を、僕は隣で見ていた

No-Ad薬剤師/薬学部

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「薬剤師国家試験に落ちた彼女を、僕は隣で見ていた」を電子書籍化しました。それに伴い、掲載しきれなかった内容を再編集して公開します。薬学生・薬学予備校生が具体的に学んでいる内容を、医療従事者を除く一般の人に知ってもらえれば幸いです。

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大学時代にグルメ本を出版・書評コンクール入賞など、文筆に傾倒。就職できずに当時薬学生だった彼女のヒモになるが、一念発起して立ち上げたブログで生計を立てることに成功(その後、結婚!)。ゲームやマンガなどエンタメ分野のレビュー、感謝を綴ったエッセイが好評。ブログ歴8年目になり、当時の内容を綴ったノンフィクション小説の電子書籍化が決定。

医薬品について

薬剤師の場合、医薬品についての見識を深める必要がある。商品としてではなく、人の命を生かしも殺しもすることを常に意識しなければならない。そのためにも、開発のコンセプトから承認されるまで臨床試験、承認後の制度、製造と品質管理など、社会に及ぼす影響についても学んでいく。

また、どの疾患にはどの薬がどんな風に効くのかを網羅することになる。どのようにして健康を害し、どんな病を患い、どんな医薬品を使うべきか。その医薬品が体内でどのように吸収されて体外へ出ていくのか。その一つ一つを学ぶのだ。

疾患と対応する薬

例えば消化器疾患の場合↓↓

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ノートの左半分が、胃潰瘍になる原因。ノートの右半分が、胃潰瘍に対する薬の一覧と、どのように体内で効いていくのかをまとめてある。

疾患には、体の変化や兆候がある。頭が痛い、お腹が痛い、皮膚が変色したなどが代表的だろうか。医師が処方した医薬品が患者の症状を改善する薬なのか、用法用量、他剤との飲み合わせなどをチェックするのは薬剤師の大切な仕事である。なので、使用上の注意や体内でどのように効いていくのかを深く学ぶ。

薬剤師を取り巻く法律

薬剤師と法律は切っても切れない。その最大の理由は、やはり医薬品を専門に扱う唯一の職業だからである。

わかりやすいところで言えば、覚せい剤取締法、大麻取締法及びあへん法など。薬物依存や悪用されるイメージが強いかもしれないが、本来は痛み止めなどに使用される。教科書でも取り扱いが大きかった二つの法律を紹介したい。

薬事法

第1条 この法律は、医薬品、医薬部外品、化粧品及び医療機器の品質、有効性及び安全性の確保のために必要な規制を行うとともに、医療上特にその必要性が高い医薬品及び医療機器の研究開発の促進のために必要な措置を講ずることにより、保健衛生の向上を図ることを目的とする。

簡単に言えば、医薬品・医療機器等の物に関わる法律。iPS細胞のように新しい項目も年々増え続けるので、薬剤師になった後も学び続けなければならない。

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薬事法について

薬剤師法

第1条 薬剤師は、調剤、医薬品の供給その他薬事衛生をつかさどることによって公衆衛生の向上及び増進に寄与し、もって国民の健康な生活を確保するものとする。

薬剤師の三大業務である「調剤」「医薬品の供給」「その他薬事衛生」について学ぶ。この法律の中の言及に、公衆衛生の向上及び増進に寄与し~と明記されている。なので、衛生についても深く学ぶ。

  • 栄養と健康……3大栄養素それぞれの役割、食品が腐るまでの過程についてなどを物質から学ぶ。食品の保存料、食中毒の症状、原因の食べ物なども。
  • 生活環境と健康……地球環境や生態系、水、大気、室内環境などを細かく学ぶ。
  • 化学物質の人体への影響……有害物質を吸収し、体外へ出るまで過程など。汚染防止、汚染除去などに関する基礎的な知識なども。

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腐敗について

個人的に最も驚いたのが、製造物責任法(PL法)だった。

第1条……この法律は、製造物の欠陥により人の生命、身体または財産に係る被害が生じた場合における製造業者等の損害賠償の責任について定めることにより、被害者の保護を図り、もって国民生活の安定と向上と国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。

言われてみれば、医薬品も製造物の一つである。そして、医薬品による副作用が生じ、社会問題に発展する例は「薬害」と呼ばれる。ペニシリンショック死事件(日本で医薬品の副作用が初めて問題になった事件)、サリドマイド薬害、薬害エイズ事件などが有名だろうか。

どの職業にも、歴史や背景がある。それを学ぶ手段として、法律や歴史は欠かせない。

これら全てを学ぶ基礎となる物理・生物・化学

  • 物理……化学物質の基本的性質、原子・分子の構造など
  • 生物……人体の仕組み、体内を構成する物質の役割など
  • 化学……化合物の基本構造、代表的な反応など

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電子書籍でも言及しましたが、範囲が膨大なのに問題数が少ないため、勉強が大変です。

医療従事者として

医療従事者として、正しい倫理観を身につけることも必要である。

生まれてから死ぬまでの間に起こり得る様々な出来事から、生命の尊さを学ぶ。例えば、人工授精・体外受精などの生殖技術、出生前診断、安楽死、尊厳死など。

もちろん、日本における社会保障制度、介護保険制度、医療保険制度の仕組みと現状、国民医療費の動向なども。この分野は薬剤師に限らず、一般教養の延長と言い換えても良いだろう。

人の命と常に向き合う以上、正しい倫理観は必要不可欠である。

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参考にさせていただいた教科書。重さ10キロ。あまりにも膨大なので、すべてを説明するのは不可能(だと僕は感じた)。

★この記事に掲載した内容は2015年第100回の情報なので、現在とは異なる点もあると思われる。

この記事に書いてある内容は、医療従事者でも何でもない僕が、あくまで薬剤師を知らない一般の人向けに簡易的にまとめた内容である。なので、一般生活において身近な内容に焦点を当てているつもりだ。実際はもっと専門的だが、「こんなことを学んでいるんだ」と知ってもらえれば幸いである。

予備校で学ぶ上で大切にしていたこと

9月~の勉強内容

「予備校が始まってからは、考える必要のある科目をまず重点的にやった」

大きく分けて、考えるものと暗記するものがある。予備校が始まるまでは、暗記中心に取り組んでいた、と事前に書いた(バイトの合間など)。

「暗記はギリギリになっても点数伸びるけど、考えるやつを自分のものにするには時間がかかる。物理、化学、生物と衛星の一部、薬物治療、薬剤を早めから手つけたかな。その中でも特に物理、化学、薬剤かな」

過去問について

「過去問は、自分で時間を作って解いていく」

「直近の二、三年分はニ周以上。そして、苦手なところは何回も。その問題が解けたから終わり! ではなく、解答や問題文でわからないところ、関連するところをチェックする。分からない単語など調べて、他の科目とつなげながら一緒に勉強する」

生物の問題を解く→薬理が関係していると思ったら、その範囲もまとめて勉強する、という具合である。問題と答えも覚えてしまうが、体系的に理解することが大切だ。

授業について

月~金の朝から夕方まで授業があり、朝と帰りに小テストが2回ある。朝は昨日の復習で、帰りはその日の復習の意味が込められている。

「毎日のテストに落ちない。特に、朝のテストは合格することが大切。前日の勉強が理解できていることで、積み重ねになるから。復習は必ずその日にする」

話を聞く限り、復習を積み重ねることが勉強において最も大切なのかもしれない。

また、授業中に寝る・サボるは論外である。また、一ヶ月間学んだことを復習する意味で、月イチで行うテストもある。

試験当日、休憩中に見るノートを年内までに作る

国試本番では、青本↓↓をスーツケースに入れて持って行く人もいる。

その気持ちは痛いほどわかるし、悪いこととは言えないが、やはり労力がかかるのも事実。試験日も、すべてをおさらいする時間はないのだ。

ノート作りに関しては、自分が苦手なところを把握することが大前提である。また、年が明けた後は、付箋にメモを書き、ノートに貼る作業へ切り替えた。この辺りは後の記事で言及する。

試験時間に生活リズムを合わせる

極端な例になるが、国試本番の試験時間に、普段の生活では寝ているとする。これだと、本番も眠くなるのは当たり前である。なので、本番を想定して毎日を過ごすことは心身共に大切である。

彼女の場合、朝は最低限の化粧をし、予備校のランチ時を除く時間以外は、すべて勉強に充てていた。

例えば、授業の合間の休み時間。トイレに行かない限り、過去問を解く。一個前の授業を見直す。行きも帰りも電車の中では暗記(名古屋市営地下鉄東山線の栄駅は、比較的席を確保しやすいのも◎)。

家に帰ってからの勉強は、トータルで3時間くらい。最優先は、その日予備校で学んだことの復習。次点は、次の日の授業内容の予習。それでも余裕があるならば、前日以前の復習をする。22時くらいまでしていた。やると決めたこと以外は、徹底的にやらないことも大切である。

あとは、睡眠時間を削らないこと。詳細は省くが、睡眠不足は脳に良くない。また、運動することも悪くない。トータルで一日30分ほど歩くだけでも気の持ちようは変えられる。大変な時期だからこそ、己と向き合うことも大切である。

苦手なことから逃げない、諦めない

「勉強を持続することが大切。周りの勉強の進行度合いを知って、焦る必要もあるんやけど、自分のテンポを貫く方が大切。焦る時も必要やけど、焦りすぎるのも良くない。人がこれだけやったとか、そういうことに影響されず、自分のペースを貫く」

言い換えると、

  • 他人と比較しない
  • 成績に一喜一憂しない
  • 詰め込み過ぎない。最初頑張るけどバテる人もいる。

国試までの間、出来るだけ同じペースでずっと勉強することが、彼女は大切だと主張する。

また、金銭やその他諸々の事情で、国試を受けるチャンスが今回きりという人もいるだろう。彼女は、それが強烈なモチベーションになっていた。そしてもう一つ。

「大学生でもない、社会人でもない。浪人もしている。自分はなんなんやろうって毎日が嫌やった」

 

以上です。他にも聞きたいことがあれば、コメントください。ありがとうございました!

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