【2024年2月12日 北米版の特典を紹介 追記・更新】
2023年1月19日に発売されたNintendo Switch / PlayStation 4 / PlayStation 5 / Xbox Oneソフト『A Space for the Unbound 心に咲く花』をクリアした感想・評価・考察などです。項によっては、ネタバレ注意です。
A Space for the Unbound 心に咲く花 とは
90年代後半のインドネシアの田舎町を舞台にした、人生の一幕を切り取ったようなアドベンチャーゲーム。 超自然的な力を手にした少年と少女の関係や、不安や絶望を乗り越えていくことの意味が、美しいピクセルアートを背景にみずみずしく描かれます。
プレイ人数:1人
ジャンル:アドベンチャー
CERO:C
クリアした感想・評価
ストーリーが総て。青春が題材かと思いきや……
高校生活が終わろうとする中、ふたりの優しい高校生アトマとラヤと一緒に、自分を見つける旅へと出かけましょう。突然解き放たれた謎の超能力に存在を脅かされ、ふたりは町を調べてまわり、隠された秘密を解き明かさなくてはなりません。そしてお互いのことを深く知り合い、やがては世界の終わりと対峙することを強いられます。
舞台は、90年代後半のインドネシアの田舎町。プレーヤーが操作するアトマ(画像左↑↑の少年)は、序章で川に流されてしまいます。目が覚めると高校にいて、目の前には彼女のラヤがいるところからスタート。
高校の時にこんなリスト作られたなあ……と。世界共通なんですかね
ラヤが作成したやりたいことリストを一緒に達成することが目的で、学校をサボったり映画デートを楽しむことに。
初々しい
木の上に登った猫を救おうとすると、ラヤの不思議な能力によって主人公アトマは助けられます。状況が把握出来ないながらも、ラヤには不思議な能力があるそうで、、、これを使用すると心身にダメージを受けるとのこと。
その後は、映画館デートへ。ポップコーンを食べる手が重なった二人……。付き合いたてなのかな?
映画を見ると、世界がおかしくなっていて、ラヤも体調を崩してしまい、、、
主人公アトマが再度目を覚ました時にはラヤはおらず。その代わりに、猫と話せるようになったり。
記事を書くのが本当に大変だったのですが、、、序盤から状況がどうなっているのか把握出来ないような不明瞭な描写がちらほら。没入感はあるのですが、章を重ねるごとに時系列や世界線がバラバラなようで、街も人の様子もおかしくなったり。情報不足もありますし、時空の連続性云々とかプレイ中もよく分からないわからない上に整理も出来ません。
基本的には、おかしくなった原因を探るためにラヤを探すことになるという感じでしょうか。
街の不良:エリックを消してしまったラヤ。その次の章では、エリックの存在を皆が忘れていたり↓↓……。温厚で優しい恋人だったラヤがどういう人なのかを見極めるのもポイントの一つに。
上手にまとまらないストーリーですが、エンディングまでプレイすればすべてを理解出来た上で納得することが可能になっており、クリアしなければ何もわからない作品になっています。
おつかいが基本で、面白くはないゲーム性だが、、、
おつかい&おつかい&おつかい
2Dマップを移動する、謎解き要素があるアドベンチャーゲーム……と言えば聞こえは良いのですが、おつかいを一つずつ回収していく過程は、たらい回しそのものだったり……。
目的のケーキを入手するためにカフェに行くも、その場で材料がないことを知らされ、材料を揃えるためにはまた別の人に……みたいなループ。おつかいが好きじゃないので、割りとゲームとしてはだるかったです。
スペースダイヴなる能力を使って、対象人物の過去や深層心理の世界の問題を解決し、現実の行動を変えて、おつかいを成功させていく。『THE MEDIUM 霊』や『サイレントヒル』と少し似てますかね。
ある時系列のエリックの場合だと、エリックが不良になった原因がわかったり。エリックの父親にもスペースダイヴすることになるので、家庭環境の問題も見えてきたり……。
ただ、これらのゲーム性はあくまでおまけというか、クリア後のストーリーへの理解と比較すれば相対的に小さな要素でした。クリア後はストーリー部分が心に響きすぎるので、ゲーム性は本作の評価に影響を与えるものではないという印象です(だから書くことが少ない)。
ミニゲームやQTE多め
盗聴して情報収集したり
スペースダイヴの中で、秤の重量を同じにするミニゲームがあったり
家具が降ってきたのを躱しながら進んだり
『逆転裁判』や『大奥記』のように、証拠を集めて被告に「異議あり!」を決めたり
あとは、QTE(時間内にボタン入力を成功させて進行させる)が本当に多いです。
殺意の波動に目覚めたリュウVSベガ……ではないです(技はストツーそのまんま)。
初見で取り返しのつかない要素が多い
リフティング100回連続成功させないと……(FF10の雷平原を思い出しました)
メインストーリーとは別に、やりたいことリストを任意で埋めるのですが、その難易度が割りと鬼畜でした。次の章に移る時は、「やり残したことはない?」的なことを聞かれるので、攻略サイト(あるのかわかりませんが)を見ながら進めても良いかもしれません。
やりたいことリストの「世界一モフモフの動物をなでる」ためには、ゲームを通して25匹の犬や猫を可愛がる必要があります。4匹と友達になれなかった(撫でていない)らしい。
ゲームセンターでは、フューチャー・ファイター(ストツーのQTE)でハイスコアを叩き出すというリストも。1500を超える→QTE(制限時間内に入力する)の難易度が厳しすぎた。
道端で拾える王冠コレクションだけはコンプリート。挿絵が入りました。
英字を集めていれば違った展開があった……
なお、エンディングに変化があるのかは不明です(分かり次第追記します)。
DVや精神病のような描写がある……
個人的にキツかったのが、DVのような描写です。何を以てDVとするかにも依りますが、暴言による自己否定、強烈な劣等感、存在意義の消滅など、理解しているとは言わないまでも伝わるものがありました。
精神病も同じですね。精神病という表現が正しいかもわからないですが、要はメンタルにずっしりとくるような描写が多い、ということが伝えたいです。
やめてくれよ……と、プレーヤーの経験によってはメンタルをやられかねない?描写も
詳細はネタバレの項で後述しますが、そういった表現があるということ。このブログの記事で紹介してきたものだと、『OMORI』『NEEDY GIRL OVERDOSE』『ドキドキ文芸部プラス!』などとはまた違った重みがありました。
色々と書いておいてアレですが、面白いとか楽しむとかそういう作品ではないかもしれません。人生の難しさ、現実の難しさを描いており、クリア後は、自分の周りにいる人達を大切にしよう、人生の一コマを大切に生きよう、そんなことを思える作品でした。
Switch版はロードやや長い
このゲームの画質だとSwitch版の方が向いてるかな~と思って購入したのですが、、、MAPの行き来が多く、ロード時間の長さがやや気になりました。なので、携帯しないならばSwitch版よりもPS5版の方がおすすめ。
早期購入特典のサントラの中身
なるほど……!! ってなりました。
クリア時間・クリア後
クリア後は何もなし(やりたいことリストを完璧に埋めてもエンディングは大きく変わらないと思われる)。
クリア時間は10~12時間くらいでしょうか。途中のたらい回しがだるくて放ったらかしにしていた時間もあるので、もう少し短いかもしれません。
攻略メモ
スプリンクラーはBを開ける必要あり。その後、鍵を拾って3・8・10
ブラジルはワールドカップ4回優勝
空手のナンバー:357
大きな光玉を置いて、対応の人物にしょうがあめ・百合・メダルを置く
図書館の金庫:49614
扉:右から1番目、右2、右1、右3、左2、左1
ラヤの家の扉:左、真ん中、左、右、右、真ん中
ラヤの部屋の扉:453127・月と日を逆に入力する必要があった(海外のゲームっぽい)
ネタバレ(クリア後に閲覧を推奨)
ネタバレが購入意思に大きな影響を及ぼさない作品もありますが、本作は深く関わると思うので、クリア後の閲覧推奨です。本作のゲーム部分はこのネタバレのために作られたものでしかないため、他作品よりもネタバレ注意度が高いです。
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最序盤で出会ったニルマラはラヤと同一人物。小さい頃の物語を描くのが大好きなラヤという印象でしょうか。アトマは、ニルマラとラヤを繋ぐ存在。
このゲームの大半は、ラヤが作った精神の世界。登場人物の深掘りやラヤとの関係をプレーヤーに伝えるために、各章で(ラヤの視点や印象を重視して)取り上げた感じですね。この部分の演出で、なるほど……と納得しました。
ラヤは現実だけでなく精神(妄想?幻想?正しい表現がわかりませんが)の世界でも、最終的に自己否定に苛まれており、その苦しさを描いています。傷つきたくなくて逃げているのに、それでもまた傷ついてしまうの悪循環。だから、全てが自分にとって都合の良い世界を望んでいる。
ラストダンジョンというか、この幻想の世界(この場面を指しているが、このゲーム全体を指してもいるよう)で得られるのは、かりそめの幸せだけ。だから、現実に戻すためにアトマはラヤを救うという流れ。
こういう過程を見ると、簡単に一言でメンヘラ?とか言えないですよね……。
現実的な意味でラヤを救おうとするアトマは、ラヤからすると不都合で正しくない。でも、ラヤの言う正しいアトマならばラヤは幻想の世界のまま。アトマは一切攻撃せずに、ラヤの攻撃を受け続け、ラヤ自身の気づきを待つような展開がそれを象徴してます。
暴言・暴力・期待・裏切りなどなど、全てがラヤを苦しめている、、、つらい……。。。
場面は変わって、ラヤの家へ。アトマはラヤを何度も訪ねることになりますが、言葉が届かない描写は当たり前というか、ゲーム的にもとても良かった。家庭環境も見えてきます。
ラヤが幻想の世界を作った理由などを素直に語る描写。ニルマラとも分かり合えないようになったところを語るところは言葉がない。
赤い本は二人で書いた絵本。アトマと一緒に、一つずつ現実を受け入れる。
テイトクを轢き殺し、ラヤを好きな気持ちもあっていじめ、罪悪感に苦しみ、荒れていたエリック。今は許せないという自分の気持ちを認めるラヤ。許さないといけないという気持ちから解放される意味も。
ルルとの比較に苦しめられたラヤ。比較でしか認識し合えない仲で、相容れないことを受け入れる。
マリンに書く(描く)ことの楽しさ・美しさを教えたのはラヤ。マリンは家庭環境が良く、絵に興味を持つと絵画教室へ通い画材を揃えてもらえたりする描写は、親ガチャという一言では片付けられないほど深刻なものという印象でした(キツかった)。
また、ラヤへのイジメを見ていたけど助けられなかった懺悔も。ラヤはマリンに嫉妬していた気持ちを認められなかったとも。
すべての元凶と言っても良いと考える父親との決別。毒親と一括りにするのも憚られるほどDVはキツイですね……。
テイトクとボスケにも。あの時は仕方なかった、と。それに、人の命よりも早くお迎えが来るのが猫だから、と。実家で一緒に暮らしていたワンちゃんを思い出すようで……泣ける。
一歩ずつ、一歩ずつ、現実へ歩むアトマとラヤ。アトマについては、川で流されて死んだ人物として描かれていますが、マリン曰く卒アルや過去10年の新聞見てもそんな人はいないとのことだったので、ラヤが共作者・救世主・理解者として創り出した存在なのだと僕は捉えています。
ラヤが望んだアトマはもっと都合がいいイエスマンのような存在だと思われますが、プレーヤーは現実的な意味でラヤを救うために奔走する感じですね。
ニルマラを受け入れて抱きしめると、ニルマラは消える。やはりニルマラは、小さい頃の描くことが大好きだったラヤという印象です。
最後は、アトマとの別れ。アトマという存在を理解しながらも募る気持ちを語る描写は、振り返ってみると涙が……。やさしい、やさしい描写でした。真の意味で、この世界の終焉を迎えます。
登場人物との折り合いをつけ、ニルマラやアトマとも別れ、今度こそ本当の現実のベッドの上で目覚めたラヤ。このゲームをやって良かった、と思えた瞬間でした。自身で現実とは異なる世界を作らなければならないほど追い詰められていたことが分かります。
数年後、引っ越す日まで時間が経過。ラヤのパパは本当にキツい存在だったので、離婚した結果だけが分かって良かった。
街の人々や登場人物と過去について喋ることが可能に。過去に出来て本当に良かったねラヤ……という心境でした。人生というか、時間の偉大さを感じる一コマ。
最後は、雨上がりの街を見届けて、(おそらくアトマへの)花を添えておしまい。プレイ中よりも、振り返ると泣けてくる不思議。
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2024年4月12日発売のCollector’s Edition (輸入版:北米)の特典が良い
僕はこの作品のファンなので購入予定ですが、2万円以上するのはネックですね……。追記予定です。
まとめ
クリア後は、なんとも言葉が出なくなるというか、、、自分の周りにいる人達を大切にしよう、人生の一コマを大切に生きよう、そんなことを感じた作品でした。前述しましたが、面白いとか楽しむとかそういう作品ではないですね。強いて言えば、啓発に近いでしょうか。でも、プレイして本当に良かった。
他のゲームレビューと比較してもちゃんと書けた気がしないですし、苦労しました。ただ、画像の整理や文章捻出などの記事作成過程で気持ちを整理していると、自分が思っていたよりも大切にしたい作品だと気付きました。日本語の翻訳も素晴らしいと思います。
(ゲームという視点で考えると)別に面白くないので、おすすめはしづらいです。でも、この作品を手に取ったならば、それは縁だと思えるような不思議な魅力がある唯一無二の作品でした。
★体験版も配信中です★
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