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渋谷郵便局で200円を恵んでくれた貴女へ

あの時の感謝を伝えたい日常エッセイ東京

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 就活をしていた時に、一人の女性に救われた話。

  

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大卒後、就職に失敗→薬学生の彼女のヒモを経てブロガーに(15年の交際を経て結婚!)。エンタメ分野のレビュー、感謝を綴ったエッセイが好評。当時の内容を綴ったノンフィクション小説「薬剤師国家試験に落ちた彼女を、僕は隣で見ていた」が電子書籍化しました!

2012年6月中旬

 とある出版社のエントリーシートの締め切り直前、渋谷郵便局で最後の仕上げをしていた。消印有効ではなく、○日までの必着。なので、この日のうちに速達で発送しなければ間に合わない状況だったことを覚えている。

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引用:Wikipediaより 東京都渋谷区渋谷1-12-13

 なんとか日付が変わる前に完成させて、窓口へ。

「390円になります」

 財布を見たら、あれ? 200円しかない。

「クレジットやSuicaは使えないですよね?」

「使えないですね~」

 うーん、困った。この時点で22時半くらいだったと思う。とりあえず、郵便局の裏のコンビニATMへ(セブンイレブン渋谷1丁目店だったはず)。

 しかし、なんとこの日に限ってメインバンクのUFJは取引中止。たま~に行われていたシステムメンテナンス的なものだったと思う。こんなことがあるんだな~と思いつつ、レジでSuicaの残高を確認してもらった。600円ほどあったので、200円分の切手を下さいと言った。すると、「出来ないみたいですね」と言われてしまった。……そっか、切手は現金じゃないと買えないのか。

 うーん、困った。一縷の望みをかけ、急ぎ足でUFJの渋谷中央支店へ行った。しかし、やはり停止中……。

 ここで、マジでヤバイ状況だと自覚した。というのも、友人がその企業に内定した人と僕を引き合わせてくれていたからだ。社風が向いているとも言ってくれていた。この時点で内定をもらった企業はなかったし、そして何より、志望度が格段に高かった。

 だが悲しいことに、こういうピンチの時に限ってスマホの電池は切れていた。金券ショップも現金のみ、友人を頼る術もなし。どうしたら数分で電子マネーを現金に変換出来るのかを考えても、答えは出なかった。一度三鷹のアパートに帰るにしても、時間もお金もない。

 つまり、選択肢は二択しかなかった。

  • その企業を諦めるか
  • 見知らぬ人に頼って提出するか

 そして、僕は後者を選んだ。

 

 郵便局付近で、とりあえず目に入った人に「すみません」と声をかけたものの、あっさりと無視。ここで気付いたのだが、場所が問題だった。渋谷のド真ん中、時間帯も最悪と言っていいだろう……。

 抱いた感情は失望だった。と言うのも、歩く速度的に立ち止まってくれそうな人はいないように思えたから。とりあえず、郵便局へ戻った。

 マジでどうしよ……でも行動しないと何も変わらんしな。でもなあ……と、うだうだ考えていたら、エスカレーターから一人の女性が降りてくる姿が目に入った。……もう、行くしかない。

「すみません!」

「……はい」

 めちゃくちゃ怪しんでいたが、とりあえず返事をくれた。よし! そして僕はこう言った。

「200円を恵んでいただけませんか?」

 ……は? という女性の表情を無視して、必死に事情を説明した。僕が怪しいことはわかってるんです。変なことをお願いしてるのもわかってるんです。でも、本当なんです。200円が現金ですぐに要るんです。電子マネーは600円あるんですけど、現金がないんです、と。

「ATMに行けばいいんじゃ……」

 と言われたが、待ってました! とばかりに説明した。だからこんなことになってるんです、と一つ一つ証明するように。すべての論証を終えた後は、必死に頭を下げた。お願いします、恵んでください、あなたしかいないんです、どうしてもこの企業に入りたいんです(?)、選考に進むためにはあなたの200円が必要なんです! と。

 ここで注意していたのは「200円を貸してください」と言わなかったこと。貸し借りで生まれるであろう連絡先交換から、ナンパ目的と思われたくなかったからだ。

 

 誠意というものは時に通じるもので、その女性がしぶしぶ、本当にしぶしぶ財布から200円を出してくれたことを覚えている。首を傾げながらも財布を取り出し、悩みながらも100円玉を掴み、そ~っと持ち上げる。それでも、「本当に200円で良いんですか?」と言ってくれた。その言葉の裏には、500円くらいならOKという優しさもあったと思う。

 僕は両手で構えて、その200円を受け取った。とにかくうれしくて、これ以上ないくらい感謝しまくった。

「じゃあ、発送してきます!」

 ゆうゆう窓口に行く過程で、あれほど喜ぶことはこれからもないだろう。

 

 発送後、郵便局の外に出ると、なんと恵みの女性がいた。スマホをいじっていたので、
「本当にありがとうございます! これで人生が救われたかもしれません!」と感謝の言葉を述べた。僕の姿を確認すると、女性は自転車を押して、その場を足早に去ろうとした。失礼かと思ったが、やはり御礼を改めてさせてほしいということで、連絡先を聞いた。が、断られた。じゃあ、お名前だけでも教えていただけませんか! と言うと、たどたどしい声でフルネームを教えてくれた。

 そのまま自転車で去っていく女性に、僕は頭を下げたのだった。

 この時の女性のリアクションだが、未だに真相がわからない。女友達に聞いても答えは割れる。

 

あなたに感謝を伝えたい

 この日のことは、しっかりと日記に残している。

 なんでこの記事を書いたかと言うと、最近、ブログの可能性を感じる出来事があったのだ。今まで希望を感じられず、いまいち自信も持てなかった。自分のブログが好きになれず、今後も続けて意味があるんだろうか……と毎日のように考えていた。その考えが少しだけ変わった出来事があったのだ。

 なので、このような記事を増やしていきたいし、この記事にも少し希望を抱いている。

 

 名前も覚えています(みや⚫⚫⚫え さん)。御礼をしたいのです。

 あの時の感謝を伝えたい。

 

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コメント

  1. kame710 より:

    こんにちは。
    とってもいい話でした!
    ももさんのお人があらわれた、感じられる話ですね。
    200円めぐんでくれた人は、別の誰かだったかわかりません。私はあなたの切実な思いが伝わった人なら誰でもこたえてくれたと思いました。

  2. momotoyuin より:

    カメキチさん、こんにちは。コメントありがとうございます!
    そう言っていただけると嬉しい限りです……!
    あと、カメキチさんにコメントをしたい場合は、はてなブックマークを通してで良いんですよね……?
    ありがとうございました★